タレントマネジメント組織活性化はM-ITコンサルティング

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米国におけるタレントマネジメントの状況

タレントマネジメントについては一貫した明確な定義と概念的領域が欠落しているという指摘がある。本稿は、比較的最近のレビュー論文である、コリングス(Collings and Mellahi,2009)に基づいて米国における状況を概観していく。

 

マッキンゼーのコンサルタントが「人材獲得戦争(the War for Talent)」を発表したのは1997年である。これ以来、タレントマネジメントに関するトピックスへの関心が急激に高まった。

 

ただ、比較的最近になると、タレントマネジメントで強調される点は、より伝統的なHRM、すなわち、組織のエリート(組織の上層部)に焦点化して競争優位を得ていくということから、人材の管理を、今日のダイナミックな競争環境に適合させていくことへと、パラダイムシフトしてきている。

 

このような文脈(つまり、上層部偏重の人材マネジメントから組織全体に配慮したマネジメント)へと世紀末以降、明確にシフトしていく一方で、タレントマネジメントの概念が重要になってきた。組織の人的資本の競争優位性を極大化する取り組みが一層重要性を増すようになってきたのだ。

 

STM(Strategic Talent Management;戦略的タレントマネジメント)を定義するならば、①組織の持続可能な競争優位に貢献する、鍵となるポジションの体系的認識を必要とする活動とプロセスであること、②ハイポテンシャルと高業績者のタレントプールを開発すること、さらに、③人的資源のアーキテクチャー(=構造)を開発し、有能な実在者をそのポジションに満たしていくように促し、組織に対する持続的なコミットメントをより確実にするようにしていくことである。このような3番目の観点からすると、トップタレントのマネジメントだけではなく、より低位のポジションについての配慮も重要になってくる。

 

一言でいえば、従来のHRMは、ハイポテンシャル人材、高業績人材のマネジメントに偏ったものであったが、これからのタレントマネジメントでは、組織全体の人材の管理が重要であり、組織全体のポジションへの配置が課題になるということになる。

 

このレビューでは、2つのキーファクターに動機付けられている。

第1には、この10年以上にわたってタレントマネジメントがポピュラーになり、議論され、時には大袈裟に宣伝されてきているにもかかわらず、タレントマネジメントの定義、領域、全体としての目標に関して、依然として明確ではないということ(Lewis and Heckman,2006)である。また、第2には、タレントマネジメントに関する現在の状況をさらに悪化させたのは、この領域における理論的検討が欠けてきたからである(もちろん、これには、いくつかの例外がある-ルイスとヘックマン、キャッペリ、ボルドローとラムスタッドなど-)。

 

タレントマネジメントに関する文献が不足しているために、学術的研究でも、その実際への応用でも制約されてきた。このような弱みは多くの理由から明らかである。

 

最も顕著なことには、戦略的HRMの主要部分は、人的資源のポテンシャルが持続可能な競争優位の源泉になると指摘している。また、企業の競争優位を支える資源と組織能力は、企業の人的資本プールを作り上げる有能な個人の能力に直接的に紐づけられるものとして議論されてきた。さらに言うと、この40年にわたるグローバル企業は、組織内の戦略的ポジションを満たすのに十分なパイプラインが欠けていたと認識してきた。

 

突き詰めれば、タレントマネジメントに関する活動は、組織の資源において顕著な分量を占めている。実際、CEOたちがタレント問題について50%以上の時間を割いているという報告もある。

 

タレントマネジメントの問題は、HRのアカデミクスと実務家を超えて広い範囲の利害関係者の関心事となっている。エコノミスト・インテリジェンスは、タレントマネジメントの問題は重要性が高く、HR単独の問題に留まらないとしているし、ボストンコンサルティンググループは、タレントマネジメントが欧州で5つの大きな取り組み課題の1つであるとしている。

 

アストンとモートン(2005)は、タレントマネジメントに関して一貫して明快で正確な定義はないとしている。こうした批判に対して、ルイスとヘックマン(2006)は、タレントマネジメントの概念をめぐっては3つの主流となる思潮・潮流があるとしている。

 

  • 第1の立場は、タレントマネジメントという言葉は、単に人的資源管理(HRM)を代替するものだというもの。このような系譜に沿うと、TMは、採用、リーダーシップ開発、次世代リーダー育成(サクセッションプランニング)のようなものになってくる。このような捉え方は、単なるHRMを、戦略的HRMとして改めてブランド化したという点にある。
  • 第2の立場は、人材プール(talent pool)の開発を強調するものだ。そのプールは、プロジェクトで必要になる人材に焦点化し、ポジション(配置)を通じて従業員の前進を管理するものとなる(ルイスとヘックマン,2006)。この系譜の研究は、典型的には、マンパワー計画、あるいはサクセッションプランニングにおける初期のリサーチを作り上げた。このような立場は、TMの課題を狭義にフォーカスすることで、タレントマネジメントとHRMの違いを明らかにした。
  • 第3の潮流は、有能な人材の管理にフォーカスするものだ。この研究では、組織におけるすべての役割がAプレイヤー(高業績者)によって満たされるべきだと議論される。一方、Cプレーヤー(低業績者)は組織の外に置かれると考えられる。このようなアプローチは非常に影響力があるが、このような考え方には限界があるし、望むことも適切だとも考えがたい。そして、便宜的なHRMをTMから区別することは難しくなってくる。

 

さて、3つの潮流・考え方に対して、4番目の潮流が勃興してきている。競争優位に影響する潜在的人材がキーとなるポジションを認識することを強調するものだ。ここでの起点は、有能な人材よりもキーとなるポジションを認識することにある。ボードローとラムスタッド(2007)は、タレントマネジメントは「意思決定の科学」であるとし、その一方で、伝統的HRは単に計画と戦略であると区別した。

 

次回以降では、コリングスらが評価する、ルイスとヘックマン、キャッペリ、ボードローとラムスタッドなどの論文を紹介していきます。

 

注:タレントマネジメントは米国でさえ、言葉や概念が躍っていると揶揄されることがあります。我々がタレントマネジメントの騎手であると自負し、一定の立場から提案をするためには、明確な定義と要件を改めてタレントマネジメントに関して認識しておく必要があると考えます。

タレントマネジメントについては一貫した明確な定義と概念的領域が欠落しているという指摘がある。本稿は、比較的最近のレビュー論文である、コリングス(Collings and Mellahi,2009)に基づいて米国における状況を概観していく。

 

 

M-ITのタレントマネジメントの定義

「組織の真の事業目的や戦略を明確化し、人財の惹きつけ、定着化を図る人財管理を行い、採用から開発、活用、登用、異動などを効果的、効率的に、事業戦略の実現に向けて一体化させ、組織の生産性を最大化するプロセス」というものになります。(代表取締役 金澤 健郎)

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